2018年8月17日

std::vector<T> で MATLAB や numpy のように配列計算する

Abstract
  C++ において,クラスのコンストラクタ中でメモリを確保し,ディストラクタ中でメモリを解放することで,メモリ寿命をクラス寿命としてスコープにより制御すること (RAII※) は一般的である.C++ において,単なる配列を RAII に従い実装する場合,新たなクラスを定義することはせず,std::array<T> や std::vector<T> などの標準実装のコンテナ型を用いることが一般的である.これらのコンテナ型は,単なる配列としてだけでなく,数値計算やデータ解析における配列としても多用される.このとき「要素の追加」や「配列全体への演算」といった操作が頻繁に発生する.しかしながら,現状では std::vector<T> に演算子が定義されておらず,MATLAB における a=[1, 2, 3]; a*=4 や numpy における a=np.asarray([1,2,3]); a*=4 といった演算は,std::vector<double> a={1,2,3}; for(int i=0; i<a.size(); i++){ a[i]*=4; } のように,for 文を用いた冗長な記述となる.
  そこで,本投稿では,計算や解析で特に多用される std::vector<T> に対して演算子を定義することで,記述の簡略化を図る.より具体的には,四則演算子と剰余演算子,べき乗演算子を定義した.また,左シフト演算子 (<<) と 左シフト代入演算子 (<<=) をそれぞれ要素の結合と追加 (.push_back()) として割り当てた.この結果,先ほどの演算は,std::vector<double> a={1,2,3}; a*=4; のように簡略化された.

※ RAII は Resource Acquisition Is Initialization の省略形.「資源(リソース)の確保と解放を,クラス型の変数の初期化と破棄処理に結び付けるというプログラミングのテクニック [追記1]」のこと.